》島《しま》で一番《いちばん》流行《はや》るのは端艇競漕《ボートレース》と野球競技《ベースボール》とであつた。端艇競漕《ボートレース》は本職《ほんしよく》の事《こと》だから流行《はや》るのも無理《むり》は無《な》いが、大事《かんじん》の端艇《ボート》は甞《かつ》て起《おこ》つた大颶風《だいぐふう》の爲《た》めに大半《たいはん》紛失《ふんしつ》[#ルビの「ふんしつ」は底本では「ふんじつ」]してしまつたので、今《いま》殘《のこ》つて居《を》るのは「ギク」一|隻《さう》、「カツター」二|隻《さう》で、櫂《オール》も餘程《よほど》不揃《ふぞろひ》[#ルビの「ふぞろひ」は底本では「ぶぞろひ」]なので、とても面白《おもしろ》い競漕《きやうそう》などは出來《でき》ない、時々《とき/″\》やつて見《み》たが、「ハンデー」やら其他《そのほか》樣々《さま/″\》の遣繰《やりくり》やらで、いつも無邪氣《むじやき》な紛着《もんちやく》が起《おこ》つて、墨田川《すみだがは》の競漕《きやうそう》の樣《やう》に立派《りつぱ》には行《ゆ》かぬのである。野球《ボール》は其樣《そん》な災難《さいなん》が無《な》いから、毎日《まいにち》/\盛《さか》んなものだ[#「盛《さか》んなものだ」は底本では「盛《さか》んなものた」]、丁度《ちやうど》海岸《かいがん》の家《いへ》から一|町《ちやう》程《ほど》離《はな》れて、不思議《ふしぎ》な程《ほど》平坦《たいらか》な芝原《しばはら》の「ゲラウンド」があるので、其處《そこ》で「アウト」「ストライキ」の聲《こゑ》は夕暮《ゆふぐれ》の空《そら》に響《ひゞ》いて、審判者《アンパイヤー》の上衣《うはぎ》の一人《ひとり》黒《くろ》いのも目立《めだ》つて見《み》える。櫻木大佐《さくらぎたいさ》は今年《ことし》三十三|歳《さい》、身《み》は海軍大佐《かいぐんたいさ》であるが、日本人《につぽんじん》には珍《めづ》らしい迄《まで》かゝる遊戯《スポルト》を嗜好《すきこの》んで、また仲々《なか/\》達者《たつしや》である、昔《むかし》は投手《ピツチ》の大撰手《チヤンピオン》として、雄名《ゆうめい》其《その》仲間《なかま》には隱《かく》れもなかつた相《さう》な、今《いま》も其《その》面影《おもかげ》が殘《のこ》つて、此《この》朝日島《あさひたう》中《ちう》、武村兵曹《たけむらへいそう》と
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