ぎ》にも車室《しやしつ》の頂上《てうじやう》に設《まう》けられて、鐵梯《てつてい》を傳《つた》つて屋根《やね》から出入《でいり》する樣《やう》になつて居《を》る。それは四面《しめん》の鐵檻《てつおり》の堅牢《けんらう》なる上《うへ》にも堅牢《けんらう》ならん事《こと》を望《のぞ》んで、如何《いか》に力強《ちからつよ》き敵《てき》が襲《おそひ》來《きたつ》ても、决《けつ》して車中《しやちう》の安全《あんぜん》を害《がい》せられぬ爲《ため》の特別《とくべつ》の注意《ちうゐ》である相《さう》な。乘組《のりくみ》の人員《じんゐん》は、五人《ごにん》が定員《てんゐん》で、車内《しやない》には機械室《きかいしつ》の外《ほか》に、二個《にこ》の區劃《くくわく》が設《まう》けられ、一方《いつぽう》は雨露《うろ》を凌《しの》ぐが爲《た》めに厚《あつ》さ玻璃板《はりばん》を以《もつ》て奇麗《きれい》に蔽《おほ》はれ、床上《しやうじやう》には絨壇《じゆうたん》を敷《し》くもよし、毛布《ケツトー》位《ぐら》いで濟《す》ますもよし、其處《そこ》は乘組人《のりくみにん》の御勝手《ごかつて》次第《しだい》、他《た》の區劃《くくわく》は彈藥《だんやく》や飮料《いんれう》や鑵詰《くわんづめ》や乾肉《ほしにく》や其他《そのほか》旅行中《りよかうちう》の必要品《ひつえうひん》を貯《たくわ》へて置《お》く處《ところ》で、固定旅櫃《こていトランク》の形《かたち》をなして居《を》る。
『斯《か》う出來上《できあが》つたら立派《りつぱ》なもんでせう。』と武村兵曹《たけむらへいそう》は鼻《はな》を蠢《うご》めかしつゝ私《わたくし》を眺《なが》めた。
『見事《みごと》! 見事《みごと》! イヤ實《じつ》に驚《おどろ》く可《べ》き大發明《だいはつめい》だよ。』と私《わたくし》は膝《ひざ》の進《すゝ》むを覺《おぼ》えなかつた。兵曹《へいそう》は猶《なほ》も威勢《ゐせい》よく
『ね、此《この》自動鐵檻車《じどうてつおりのくるま》が出來《でき》て見《み》なさい、如何《どん》な危險《きけん》な塲所《ばしよ》だつて平氣《へいき》なもんです、猛狒《ゴリラ》や獅子《しゝ》が行列《ぎようれつ》を立《た》てゝ襲《おそ》つて來《き》た所《ところ》で、此方《こつち》は鐵檻車《てつおりぐるま》の中《なか》から猛獸《まうじう》共《ども》の惡相
前へ 次へ
全302ページ中175ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
押川 春浪 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング