が大好《だいす》きなんですよ、日本《につぽん》へ皈《かへ》りたくつてなりませんの[#「なりませんの」は底本では「なりせまんの」]、でねえ、毎日《まいにち》/\日《ひ》の丸《まる》の旗《はた》を立《た》てゝ、街《まち》で[#「街《まち》で」は底本では「街《まち》て」]戰爭事《いくさごつこ》をしますの、爾《そ》してねえ、日《ひ》の丸《まる》の旗《はた》は強《つよ》いのですよ、何時《いつ》でも勝《か》つてばつかり居《ゐ》ますの。』
『おゝ、左樣《さう》でせうとも/\。』と私《わたくし》は餘《あま》りの可愛《かあい》さに少年《せうねん》を頭上《づじやう》高《たか》く差《さ》し上《あ》げて、大日本帝國《だいにつぽんていこく》萬歳《ばんざい》と※[#「口+斗」、8−11]《さけ》ぶと、少年《せうねん》も私《わたくし》の頭《つむり》の上《うへ》で萬歳々々《ばんざい/″\》と小躍《こをどり》をする。濱島《はまじま》は浩然《かうぜん》大笑《たいせう》した、春枝夫人《はるえふじん》は眼《め》を細《ほそ》うして
『あら、日出雄《ひでを》は、ま、どんなに※[#「りっしんべん+喜」、第4水準2−12−73]《うれ》しいんでせう。』と言《い》つて、紅《くれない》のハンカチーフに笑顏《えかほ》を蔽《お》ふた。
第二回 魔《ま》の日《ひ》魔《ま》の刻《こく》
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送別會――老女|亞尼《アンニー》――ウルピノ[#「ウルピノ」に二重傍線]山の聖人――十月の祟の日――黄金と眞珠――月夜の出港
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それから談話《はなし》にはまた一段《いちだん》の花《はな》が咲《さ》いて、日永《ひなが》の五|月《ぐわつ》の空《そら》もいつか夕陽《ゆうひ》が斜《なゝめ》に射《さ》すやうにあつたので、私《わたくし》は一先《ひとま》づ暇乞《いとまごひ》せんと折《をり》を見《み》て『いづれ今夜《こんや》弦月丸《げんげつまる》にて――。』と立《た》ちかけると、濱島《はまじま》は周章《あはて》て押止《おしとゞ》め
『ま、ま、お待《ま》ちなさい、お待《ま》ちなさい、今《いま》から旅亭《やどや》へ皈《かへ》つたとて何《なに》になります。久《ひさし》ぶりの面會《めんくわい》なるを今日《けふ》は足《た》る程《ほど》語《かた》つて今夜《こんや》の御出發《ごしゆつぱつ》も是非《ぜひ》に私《わた
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