だ、彼等《かれら》は其《その》敬愛《けいあい》する櫻木大佐《さくらぎたいさ》の知己《ちき》たる吾等《われら》が、無事《ぶじ》に此《この》島《しま》に上陸《じやうりく》したる事《こと》を祝《しゆく》して呉《く》れるのであらう。大佐《たいさ》は此樣《このさま》を見《み》て微笑《びせう》を泛《うか》べた。
『實《じつ》に感謝《かんしや》に堪《た》えません。』と私《わたくし》は不測《そゞろ》に※[#「りっしんべん+喜」、第4水準2−12−73]涙《うれしなみだ》の流《なが》るゝを禁《きん》じ得《え》なかつた。無邪氣《むじやき》なる日出雄少年《ひでをせうねん》は眼《め》をまんまる[#「まんまる」に傍点]にして、武村兵曹《たけむらへいそう》の肩上《かた》で躍《をど》ると。快活《くわいくわつ》なる水兵《すいへい》の一群《いちぐん》は其《その》周圍《まわり》を取卷《とりま》いて、『やあ、可愛《かあひ》らしい少年《せうねん》だ、乃公《おれ》にも借《か》せ/\。』と立騷《たちさわ》[#ルビの「たちさわ」は底本では「ちちさわ」]ぐ、櫻木大佐《さくらぎたいさ》は右手《めて》を擧《あ》げて
『これ、水兵《すいへい》、少年《せうねん》は痛《ひど》く疲勞《つかれ》て居《を》る、あまり騷《さわ》いではいかぬ』と打笑《うちえ》みつゝ
『それより急《いそ》ぎ新客《しんきやく》の部室《へや》の仕度《したく》をせよ、部室《へや》は二階《にかい》の第二號室《だいにがうしつ》――余《よ》の讀書室《どくしよしつ》を片付《かたづ》けて――。』と。
斯《か》く命《めい》じ終《をは》つた大佐《たいさ》は、武村兵曹《たけむらへいそう》の肩《かた》から日出雄少年《ひでをせうねん》を抱《いだ》き寄《よ》せ、私《わたくし》に向《むか》つて
『一先《ひとま》づ私《わたくし》の部室《へや》へ。』と前《さき》に立《た》つた。
導《みちび》かるゝまゝに入込《いりこ》んだのは、階上《にかい》の南端《なんたん》の一室《ひとま》で、十|疊《じやう》位《ぐら》いの部室《へや》、中央《ちうわう》の床《ゆか》には圓形《えんけい》のテーブルが据《す》へられ、卓上《たくじやう》には、地球儀《ちきゆうぎ》や磁石《じしやく》の類《るゐ》が配置《はいち》され、四邊《あたり》の壁間《かべ》には隙間《すきま》も無《な》く列國《れつこく》地圖《ちづ》の懸《か》
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