て呉《く》れんと考《かんが》へたので、眼《まなこ》を放《はな》たず睥睨《へいげい》して居《を》る、猛狒《ゴリラ》も益々《ます/\》猛《たけ》く此方《こなた》を窺《うかゞ》つて居《を》る、此《この》九死一生《きうしいつしやう》の分《わか》れ目《め》、不意《ふい》に、實《じつ》に不意《ふい》に、何處《どこ》ともなく一發《いつぱつ》の銃聲《じうせい》。つゞいて又《また》一發《いつぱつ》[#ルビの「いつぱつ」は底本では「いつはつ」]、猛狒《ゴリラ》は思《おも》ひがけなき二發《にはつ》の彈丸《だんぐわん》に射《ゐ》られて、蹴鞠《けまり》のやうに跳上《をどりあが》つた。
吾等《われら》も喫驚《びつくり》して其方《そなた》を振向《ふりむ》くと、此時《このとき》、吾等《われら》の立《た》てる處《ところ》より、大約《およそ》二百ヤード許《ばかり》離《はな》れた森《もり》の中《なか》から、突然《とつぜん》現《あら》はれて來《き》た二個《ふたり》の人《ひと》がある。
『や、や、日本人《につぽんじん》! 日本人《につぽんじん》!。」と少年《せうねん》も私《わたくし》も驚愕《おどろき》と喜悦《よろこび》に絶叫《ぜつけう》したよ。
實《じつ》に夢《ゆめ》ではあるまいか。現《あら》はれ來《きた》つた二個《ふたり》の人《ひと》は紛《まぎら》ふ方《かた》なき日本人《につぽんじん》で、一人《ひとり》[#ルビの「ひとり」は底本では「ひいり」]は色《いろ》の黒々《くろ/″\》とした筋骨《きんこつ》の逞《たく》ましい水兵《すいへい》の姿《すがた》、腰《こし》に大刀《だいたう》を横《よこた》へたるが、キツと此方《こなた》を眺《なが》めた、他《た》の一人《いちにん》は、威風《ゐふう》凛々《りん/\》たる帝國海軍士官《ていこくかいぐんしくわん》の服裝《ふくさう》、二連銃《にれんじう》の銃身《じうしん》を握《にぎ》つて水兵《すいへい》を顧見《かへりみ》ると、水兵《すいへい》は勢《いきほひ》鋭《するど》く五六|歩《ぽ》此方《こなた》へ走《はし》り近《ちか》づく、此時《このとき》二發《にはつ》の彈丸《だんぐわん》を喰《くら》つた猛狒《ゴリラ》は吾等《われら》を打捨《うちす》てゝ、奔馬《ほんば》の如《ごと》く馳《は》せ向《むか》ひ、一聲《いつせい》叫《さけ》ぶよと見《み》る間《ま》に、電光《でんくわう》の如《ごと》く水兵
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