《すいへい》の頭上《づじやう》目掛《めが》けて飛掛《とびかゝ》つた。水兵《すいへい》ヒラリと身《み》を躱《かは》すよと見《み》る間《ま》に、腰《こし》の大刀《だいたう》は※[#「抜」の「友」に代えて「ノ/友」、144−5]手《ぬくて》も見《み》せず、猛狒《ゴリラ》の肩先《かたさき》に斬込《きりこ》んだ。猛狒《ゴリラ》怒《いか》つて刀身《たうしん》を双手《もろて》に握《にぎ》ると、水兵《すいへい》は焦《いらだ》つて其《その》胸先《むなさき》を蹴上《けあ》げる、此《この》大奮鬪《だいふんとう》の最中《さいちう》沈着《ちんちやく》なる海軍士官《かいぐんしくわん》は靜《しづ》かに進《すゝ》み寄《よ》つて、二連銃《にれんじう》の筒先《つゝさき》は猛狒《ゴリラ》の心臟《しんぞう》を狙《ねら》ふよと見《み》えしが、忽《たちま》ち聽《きこ》ゆる一發《いつぱつ》の銃聲《じうせい》。七|尺《しやく》有餘《いうよ》の猛狒《ゴリラ》は苦鳴《くめい》をあげ、鮮血《せんけつ》を吐《は》いて地上《ちじやう》に斃《たを》れた。私《わたくし》と少年《せうねん》とは夢《ゆめ》に夢見《ゆめみ》る心地《こゝち》。韋駄天《いだてん》の如《ごと》く其《その》傍《かたはら》に走《はし》り寄《よ》つた時《とき》、水兵《すいへい》は猛獸《まうじう》に跨《またが》つて止《とゞ》めの一刀《いつたう》、海軍士官《かいぐんしくわん》は悠然《いうぜん》として此方《こなた》に向《むか》つた。私《わたくし》は餘《あま》りの嬉《うれ》しさに言《げん》もなく、其人《そのひと》の顏《かほ》を瞻《なが》めたが、忽《たちま》ち電氣《でんき》に打《う》たれたかの如《ごと》く愕《おどろ》き叫《さけ》んだよ。
『やあ、貴方《あなた》は櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》※[#感嘆符疑問符、1−8−78]。』
大佐《たいさ》も愕然《がくぜん》として私《わたくし》の顏《かほ》を見詰《みつ》めたが
『や、貴下《あなた》は――。』と言《い》つた儘《まゝ》、暫時《しばし》言葉《ことば》もなかつたのである。
櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》! 々々々。此人《このひと》の名《な》は讀者《どくしや》諸君《しよくん》の御記臆《ごきおく》に存《そん》して居《を》るか否《いな》か。私《わたくし》が子ープルス[#「子ープルス」に二重傍線]港《かう》を出港《しゆ
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