。』
『まだまだ。こんな雲《くも》はこの先《さき》いくらでもあるんだ。元気《げんき》を出《だ》せよ、元気《げんき》を。』
『腹《はら》が減《へ》つてきたんだ。ラランよ、何《なに》かたべるものはないか。』
『戯談《じやうだん》いふな。三千メートルのまつたゞ中《なか》だぞ。辛棒《しんぼう》しろ、気《き》の弱《よわ》いやつだ。』
もう下界《した》を見《み》ても、なにもかもわからないほどだ。初《はじ》めの元気《げんき》もどこへやら、ペンペは胸《むね》がドキドキする。フト気《き》がつくと、先《さき》に飛《と》んでゐるラランが何《なに》が旨味《うま》いものでもたべてゐるやうな音《おと》をたてゝ、喉《のど》を気持《きもち》よく鳴《なら》してゐる。ペンペはもう我慢《がまん》ができないで、
『ラランよ、たべるものがあるなら分《わ》けてくれ。ずゐぶん旨味《うま》さうな音《おと》だ。頼《たの》むよ。少《すこ》しでいいから。』
と、疲《つか》れてきた羽《はね》にバサバサと力《ちから》を罩《こ》めて、追《お》ひつかうとするけれど、ラランのやつはさつさと先《さき》へ飛《と》びながら、着《お》ち|つ《つ》いた[#
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