》して墜落《ついらく》させてしまふのだ。そして、相手《あひて》の鳥《とり》が下《した》の方《ほう》へとだんだん小《ちひ》さくなつて墜《お》ちてゆき、見《み》えなくなつてしまふと、その時《とき》こそ得意《とくい》さうに羽《はね》を反《そ》らして、カラカラと空《そら》のまん中《なか》で、笑《わら》ふのだつた。けれどもあのヱヴェレストの頂上《てうじやう》だけは、見上《みあ》げたゞけでも目《め》が眩《くら》んで、何度《なんど》もそこまで飛《と》んで見《み》ようとしては、半分《はんぶん》もゆかないうちに、疲《つか》れてしまつたラランはゾグゾクしながら、その度《たび》に羽《はね》を縮《ちぢ》めて残念《ざんねん》さうに顔《かほ》をしかめるのだつた。
『癪《しやく》にさわるけれど、誰《だれ》か仲間《なかま》を誘《さそ》つてやらう。仲間《なかま》と飛《と》ぶなら楽《らく》なもんだ、何《なに》か饒舌《しやべ》つてるうちには着《つ》くだらうし。』
柄《がら》にもなくこんなことを考《かんが》えて、西蔵《チベット》に棲《す》んでる仲間《なかま》の鴉《からす》を一々《いちいち》たづねて話《はな》したが、皆《みんな》は日頃《ひごろ》ラランの悪知慧《わるぢえ》をよく知《し》つてゐるので、誰《だれ》も一緒《いつしよ》に飛《と》ばうとするものがなかつた。ラランは不気嫌《ふきげん》だつた。ヱヴェレスト位《くらゐ》がなんだといふ顔付《かほつき》で、皆《みんな》を馬鹿《ばか》にしたやうに唾《つば》をやたらに吐《は》くのだつた。すると一|番《ばん》最後《さいご》にペンペといふ何《なに》も知《し》らない若《わか》い鴉《からす》が出《で》てきて『そいつはおもしろいな、ヱヴェレストのてつぺんまでは大飛行《だいひかう》だ。僕《ぼく》は大賛成《だいさんせい》だ。ラランよ。僕《ぼく》でも大丈夫《だいじやうぶ》か。』
『そりや心配《しんぱい》無用《むよう》だ。ではすぐにでも出発《しゆつぱつ》しようか。』
ラランはかう答《こた》へるや否《いな》や、もう、羽《はね》をひろげた。ほかの鴉《からす》たちはペンペを馬鹿《ばか》なやつだと思《おも》ひながらもヱヴェレストの頂上《てうじやう》目指《めざ》して飛《と》びだす元気《げんき》に打《う》たれた。ラランに続《つづ》いてペンペがサッと密林《みつりん》の上《うへ》に飛《と》び出《だ
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