蝙蝠
岡本かの子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)釣瓶《つるべ》で
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)井戸|端《ばた》から
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]《むし》り
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ねば/\
−−
それはまだ、東京の町々に井戸のある時分のことであつた。
これらの井戸は多摩川から上水を木樋でひいたもので、その理由から釣瓶《つるべ》で鮎《あゆ》を汲《く》むなどと都会の俳人の詩的な表現も生れたのであるが、鮎はゐなかつたが小鯉《こごい》や鮒《ふな》や金魚なら、井戸替へのとき、底水を浚《さら》ひ上げる桶《おけ》の中によく発見された。これらは井の底にわく虫を食べさすために、わざと入れて置くさかな[#「さかな」に傍点]であつた。「ばけつ持つてお出《い》で」井戸替への職人の親方はさう云つて、ずらりと顔を並べてゐる子供達の中で、特にお涌《
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