明暗
岡本かの子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)喪《うしな》った
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)積雪|皓々《こうこう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)えて[#「えて」に傍点]
−−
智子が、盲目の青年北田三木雄に嫁いだことは、親戚や友人たちを驚かした。
「ああいう能力に自信のある女はえて[#「えて」に傍点]物好きなことをするものだ」
「男女の親和力というものは別ですわ。夫婦になるのは美学のためじゃあるまいし」
批評まちまちであった。
智子は、今から五年まえに高等女学校を卒業した。兄の道太郎と共に早く両親を喪《うしな》った彼女は、卒業後も、しばらく家で唯一の女手として兄の面倒を見ていた。去年の暮、兄は鈴子という智子とは同じ女学校の下級生を妻に迎えたので、どうやら今度は自分の結婚の番になった。
嫂《あによめ》の鈴子の兄は豊雄といって、×大出の若手の医者である。智子と新しく親戚関係になったこの青年紳士は、目的あって、せっせと智子と交際し出した。そして誰が見ても、二人は好配偶だった。殆《ほとん》ど
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