》を弄ぶように、また、老牛が狼に食《は》まれるように、転びつ、倒れつ千態万状を尽して、戯れ狂った。初冬の風が吹いて満山の木が鳴った。翁は疲れ切って満足した。瓜わらべにちょっと頬ずりして土に置いた。瓜わらべの和毛《にこげ》から放つらしい松脂の匂いが翁の鼻に残った。
 翁はしばらく息を入れていた。瓜わらべは小竹の中へ逃げ込みそうなので片手で押えた。
 膝がしらがちくちく痛痒い。翁が検めみると獣の蝨《だに》が五六ぴき褌《はかま》の上から取り付いていた。猪の相撲場の土には親猪が蝨を落して行ったのだった。
「こいつ」
 といって翁は、膝頭の蝨を、宝玉を拾うように大事に、一粒ずつ摘み取る。老いの残れる歯で噛み潰した。獣の血臭いにおいがして翁の唇の端から血の色がうっすりにじんだ。満山の風がまた亙る。
 翁にはもう何の心もなくなった。手を滑った瓜わらべは逃れて小竹の茂みに走り込んだ。代りに親猪の怒れる顔面を翁は保与《ほよ》のついた山松の根方に見出した。
 山の祖神の事である、山に棲めるほどのものを自由に操縦できないいわれはない。けれども、翁は、
「命終のとき」
 といって、従容とその親猪の牙にかけられ
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