いないのかい」
すると弟の岳神は言訳らしく
「なにしろ自分の持山のことで忙しく、ついついご無沙汰をしております」
そのとき岳神の妻が傍から、ちょっと口を入れた。
「前にはお姉さまのところへも、ときどき伺ってみましたのですが、ああいうお偉い方のことですから、すぐこっちに話の接穂《つぎほ》が無くなってしまう場合も多く、それにああいうご勉強家のことですから、お邪魔しましても、何かお妨げするような気もいたしますので、ついついご無沙汰勝ちになってしまったのでございますわ」
それからちょっと間を置き、
「ずいぶん、普通の女の子とは変っていらっしゃいますわね」
その言葉につれて良人の岳神も
「どういうものか、あの人の前へ出ると、威圧される気がするところから、つい心にもない肩肘の張り方をしてしまう。どうも姉弟ながらうち解けにくい」
と零《こぼ》した。
山の祖神が息子夫妻から衷情を披瀝したらしい言葉を聴いたのは、この姉娘に対する非難めく口振りを通してだけだった。
山の祖神はこれを聴くと、息子夫妻と一しょになって姉娘を非難したい気持なぞは微塵《みじん》もなくなった。腹の中で、「この平凡な若夫
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