静まった桜樹立が真夜中に……棟《むね》を圧《あっ》して桜樹立が……桜樹立がしんしんと……私は、ぞっとして夜具《やぐ》をかぶった。
 私はあくる日の朝日がたけて、その部屋のまわりの桜樹立が明るくあたりにかがやくころ目をさました。私の体は夜具の底にかたく丸まり、じっくりと汗になって居《い》ました。



底本:「愛よ、愛」メタローグ
   1999(平成11)年5月8日第1刷発行
底本の親本:「岡本かの子全集」冬樹社
   1976(昭和51)年発行
※「奇嬌《ききょう》」「しっきりなし」「じっくりと汗に」の表記について、底本は、原文を尊重したとしています。
※底本の「聞《きこ》こえ始めました」を「聞《きこ》え始めました」に改めました。
入力:門田裕志
校正:土屋隆
2004年3月30日作成
青空文庫作成ファイル:
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