すが、その中で個人個人によって、随分主張傾向は違っているのです。まあそういったことに就《つ》いての議論ですな。するうち、イチロは眠くなって椅子《いす》によりかかったまま眠って仕舞いました。私たちは日本の美術家に敬意を表して、私たちのベッドを譲りました。つまり彼を二人で運んでベッドへ寝かせてやり、私たちはソファや椅子を並べて寝たわけですな」
かの女は「まあ」と云った。
「まだ先があるんです。朝、彼は眼を覚ましました。勝手が違ったところにいるので、彼は妙な顔をしていました。しかし、一部始終が判ると、彼は真面目《まじめ》な顔を作って云いました。どうも君たちの新婚の夢を妨げて相済まんと。それから帰って行きました」
ここで、夫人はまた、「イチロ、ふふふふ」と、かの女の顔を見て好意の籠《こも》った笑いを贈った。
かの女は、再び「あ」と云って笑いに誘われた。逸作は、むす子の仕方を想像して、健気《けなげ》な奴と云った表情で笑っている。
しかし、かの女は笑いに巻き締められるような想《おも》いが胸に泛《うか》んだ。自分がともすれば誤解を受け易い性質から、強い味方が出来ると思う一方、強い敵の出来
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