》………。皆んな聴き分けてよ。
モントリシヤは紀元十一世紀頃に既にフランス第一の都として有名だったそうです。シーザーが攻めて来たそうです。又一時英領になったこともあるそうです。今でも其の当時からの古い城が此の町の守護神のように岩山から町全体を見守って居ります。此の城の地下道はロアール河の支流の河底を深く潜って二里も先きの城に連がって居ります。而かも其の河に架かる石橋もローマ時代から色々修理して来たもので其の橋一つにも可なり永い間の歴史が刻まれて居ります。ツール市からモントリシヤへかけて沢山の城や宮殿が建って居ります。殊にルイ王朝時代の繁栄の跡として立派な宮殿や道路が出来て居ります。町の呉服屋、家具屋などにも矢張《やは》りローマ時代のものがあり国家で保護されて居ります。だから此の地方へ毎年観光客がやって来て、落す金が八億フランにのぼるそうです。此の地方の人々はとてもそれが自慢で殊にルイ王様のお蔭で立派なものが出来た、お城も宮殿も橋も道路も偉大な事物は封建時代の王様や英雄達に依って出来たと、英雄主義を奉じて居ります。
イボギンヌの叔父夫婦の家は町から少し離れた東の方の村に在ります。私は此所
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