よい》かぎり潔《いさぎ》よく青春を葬ろうか。
 新吉が幻覚の中をさまよっているのにも頓着なくジャネットは、しきりに元気で未熟な踊りの調子で新吉を追い廻していた。新吉がやっと気がついて、その調子に合せようとすると、案外|狡《ずる》く調子を静め、それからステップの合間/\[#「/\」に「ママ」の注記]に老成《ま》せたさゝやきを新吉の耳に聞かせ始めた。
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――あんた。あたしと今日もう此所だけで訣《わか》れるつもり。」
――しかたがない。」
――やっぱりカテリイヌのこと忘れられないと見えるのね。」
――おや、どうして、君、それ、知ってるの。」
――あたしがリサから送られた娘だということ、始めからあんた気が付いたでしょう。」
――ああ、そうとも。」
――あたし、ほんとはカテリイヌの秘密知って居るのよ。」
――秘密※[#感嘆符疑問符、1−8−78] どうして。どんな。」
――あたしは、カテリイヌの私生児よ。そしてカテリイヌは、もうとっくに死んじゃったわ。」
――そりゃほんとか。ほんとのことを言ってるのか。」
[#ここで字下げ終わり]
 ジャネットは返事を
前へ 次へ
全73ページ中65ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 かの子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング