蔦の門
岡本かの子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)蔦《つた》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)青山|隠田《おんでん》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)まき[#「まき」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)たま/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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私の住む家の門には不思議に蔦《つた》がある。今の家もさうであるし、越して来る前の芝、白金《しろがね》の家もさうであつた。もつともその前の芝、今里の家と、青山南町の家とには無かつたが、その前にゐた青山|隠田《おんでん》の家には矢張り蔦があつた。都会の西、南部、赤坂と芝とを住み歴《へ》る数回のうちに三ヶ所もそれがあるとすれば、蔦の門には余程縁のある私である。
目慣れてしまへば何ともなく、門の扉の頂《いただき》より表と裏に振り分けて、若人の濡《ぬ》れ髪を干すやうに閂《かんぬき》の辺まで鬱蒼《うっそう》と覆ひ掛り垂れ下る蔓《つる》葉の盛りを見て、たゞ涼しくも茂るよと感ずるのみであるが、たま/\家族と同伴し
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