》い調和と賢《かしこ》い素直さと皓潔な放胆で適宜《てきぎ》に生きるというほどいつの時代にだって新鮮な生き方はなかろうと思いますわ。
一平 近代の青年は全《まった》く暗い影のない、何というかツルツル滑《すべ》った、そして危い程《ほど》ヒラヒラしたとりとめのない程その場その場で動いて行く。それに丁度適応する近代的女性があるだろうか。
かの子 宜《よ》い理智《りち》から明快に生きる青年と時代のカスをなめてただ軽薄《けいはく》にその場その場の生活をするのと両方でしょうね。もちろん女性にもそれに適応した型が幾つもの差別で存在してます。近代青年に対するあなたの観察は勿論《もちろん》一部分に対するものとしては誤《あやま》っては居《い》ません。が比較的に云《い》って、近代の青年は案外真面目な思想を抱いているものが多い様《よう》です。例えば彼|等《ら》の女性観を聞くと自分自身が女性でありながら一《い》ち一ち傾聴《けいちょう》せずには居られない位《くらい》に深刻に女性を解剖《かいぼう》しています。
一平 近代女性の恋愛はどうかね。今の青年は恋は出来《でき》ないと云っていて而《しか》も恋はするけどごく刹那《
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