川
岡本かの子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)白歯《しらは》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)白野|薔薇《ばら》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)はら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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かの女の耳のほとりに川が一筋流れてゐる。まだ嘘をついたことのない白歯《しらは》のいろのさざ波を立てゝ、かの女の耳のほとりに一筋の川が流れてゐる。星が、白梅の花を浮かせた様に、或《ある》夜はそのさざ波に落ちるのである。月が悲しげに砕けて捲《ま》かれる。或る夜はまた、もの思はしげに青みがかつた白い小石が、薄月夜《うすづきよ》の川底にずつと姿をひそめてゐるのが覗《のぞ》かれる。
朝の川波は蕭条《しょうじょう》たるいろ[#「いろ」に傍点]だ。一夜の眠《ねむり》から覚めたいろ[#「いろ」に傍点]だ。冬は寒風が辛《つら》く
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