い》に同棲《どうせい》迄して一方が一方の死までを見送り、あとまた間もなく一方も別に不自由なしの一生を終つて死に就《つ》いたとの事がおとうさんおかあさんに自然知れましたが、その頃はまだ二人とも田舎《いなか》で世をしのんで居た最中ですから、二人心に嘆き弔《とむら》ひ乍《なが》らそのまゝ年月を経て、その悲しみも消えて行きました。もはや顧慮する母親達も無いので二人は故郷に帰つて本性を明すの冒険をも試みようとするのかもしれません。


 月も落ちた。夜も更けた。作者も語りくたびれました。
 親子四人もいつしか各々の寝所に入り、安らかな眠りの息を呼吸してゐます。



底本:「日本幻想文学集成10 岡本かの子」国書刊行会
   1992(平成4)年1月23日第1刷発行
底本の親本:「岡本かの子全集」冬樹社
   1974(昭和49)年発行
初出:「婦女界」
   1933(昭和8)年11月
※ルビを新仮名遣いとする扱いは、底本通りにしました。
入力:門田裕志
校正:湯地光弘
2004年4月29日作成
青空文庫作成ファイル:
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