ります。そして石井柏亭《いしいはくてい》と平気で談笑して居《お》られました。
 達手《だて》で自由で宜《よ》い、と私は傍《そば》で思いました。いかにも文明国の、そして自由な新時代の女性としての公平なポーズ(姿態《したい》)だと思いました。
 ただ、女は何と云《い》っても、男より、外観美を保たなくてはいけない、これは理屈《りくつ》より審美《しんび》的立場から云《い》うのです。で、如何《いか》に、挙措《きょそ》を解放するにしても、常に或《ある》程度の収攬《しゅうらん》を、おのずから自分の上に忘れてはいけません。
 美的な放恣《ほうし》、つつましやかな自由、それはどうあるべきかと追求されてもこまるけれど、とにかく以上の字義どおり何《いず》れの女性も心術《しんじゅつ》として欲《ほ》しい、結果はおのずから達成せられるでありましょう。
 女も男と同じように働き、学び、考える時代となり、尚《なお》上述の条件を男子側より否定されるならば、永遠に、女性の生命は内面の不平を堪《こら》えて男子を羨《うらや》み続けるでありましょう。
 女性のよろこびを考えるうちに「化粧」が思い浮べられた。
 男でも化粧する人
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