を萎縮《いしゅく》されてしまった。
 生理的から観《み》ても、女の肉体は男より支持力に堪《た》えがたい、乳房の重み、腰部《ようぶ》の豊満《ほうまん》、腹部も男より複雑であります。
 殊《こと》にこの特長の発達している私には食後の大儀《たいぎ》なこと、客人《きゃくじん》の前の長時間などは、つくづくこの女子にのみ課せられた窮屈《きゅうくつ》な風習《ふうしゅう》に懲《こ》りて居《い》ます。
 この頃ではこの議を随分《ずいぶん》自分から提唱《ていしょう》して、乱れぬ程度でこの女のみに強《し》いられた苛酷《かこく》な起居《ききょ》から解放されて居るには居ます。思い出しました。四五年前の与謝野《よさの》家の歌会《うたかい》の時、その座のクインであった晶子《あきこ》夫人が、着座《ちゃくざ》しばらくにして、上躯《じょうたい》を左方に退《ひ》き膝《ひざ》を曲げてその下から一脚《ひとあし》を曲げて右方へ出されました。夫人特有の真白い素足《すあし》が、夫人の濃紫《こむらさき》の裾《すそ》から悠々《ゆうゆう》と現われました。
 夫人は、これだけのムードを事もなげな経過ぶりで満座《まんざ》のなかに行われたのであ
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