蹲《うずくま》る。)
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阿闍梨『様子のほどは、略《ほぼ》門内より覗《うかが》い知った。源右衛門とやら、山科坊より親鸞影像を引取りに参りし由。大儀であるぞ』
源右衛門『恐れ入りましてござりまする』
阿闍梨『して、引換えの礼物ほ、確《し》かと持参いたしたな』
源右衛門『はい。これでござりまする』(袖の包みより源兵衛の首を出して前に置く。)
阿闍梨『や、や、こりゃ真正の生首』
源右衛門『粗末の品ではござりまするが、手塩にかけて育てた忰。首の素性は確《たしか》でござりまする』
阿闍梨『よもや、それまでは得為《えな》すまじと思いしに、まことに首を持ち来りしか。(暫時深き思い入れ。また思い返して)然し源右衛門、約束は約束。首の数は二つであった筈だが』
源右衛門『あとの一つは即ちこの首。(自分の首を指して)体につけて持参しました。御手数ながら切り取って二つの生首、お揃え下され』
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(阿闍梨始め法師一同、驚き且つ厳粛な気分にうたれ、暫らく沈黙。)
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