鯉魚
岡本かの子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)嵐山《あらしやま》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|箸《はし》ずつ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)曲※[#「碌のつくり」、第3水準1−84−27]《きょくろく》
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一
京都の嵐山《あらしやま》の前を流れる大堰川《おおいがわ》には、雅《みや》びた渡月橋《とげつきょう》が架《かか》っています。その橋の東詰《ひがしづめ》に臨川寺《りんせんじ》という寺があります。夢窓国師《むそうこくし》が中興の開山で、開山堂に国師の像が安置してあります。寺の前がすぐ大堰川の流で「梵鐘《ぼんしょう》は清波を潜《くぐ》って翠巒《すいらん》に響《ひび》く」という涼《すず》しい詩偈《しげ》そのままの境域であります。
開山より何代目か経《た》って、室町時代も末、この寺に三要という僧《そう》が住持をしていました。
禅寺《ぜんでら》では食事のとき、施餓鬼《せがき》のため飯を一|箸《はし》
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