り、窓を破って逃げ、竹藪に入る。
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――誰が闖入《ちんにゅう》したのかと思ったら、二見か。なぜ乱暴するのだ。
――貴公はまだ知らぬのか。あの女は目黒のおかんといって、この界隈で有名な女賊だ。
――ふーむ、そんなことはあるまい、どうして、
――どうしても、こうしてもあるものか。おれはあの夜から、どうも臭いと思ったので、この間貴公が十金携えて、男狐を逃がしてやったというその目黒不動裏の七蔵という猟師の家を、試しに尋ねて見たところが、案の定、真赤な偽り、ただ普通の農家が一軒あるばかりで、その農家の主に聞けば、ちょうど先の日、貴公が十金携えて、あの家尋ねた前後の時だけ、狐の籠に入れたのを携え、椽先だけを借りに来た老人があったという。さすれば、雑司ヶ谷のかの女は、その老爺と諜《しめ》し合せて、狐のたくらみごとで十金の詐偽《さぎ》。貴公より十金誑し取ったに決った。そこであのあたりなおも処々尋ね廻り、きくところによると、あやつ、芸人上りの老父と心を合せ、同じ夫狐救い出しの狡計で、ほかに欺《あざむ》いた人も少なからずあるらしいとい
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