食べられる暇《ひま》さえある職業だったら職業というものは何という好もしいものでしょう。
○繕《つくろ》った靴下《くつした》でも穿《は》くときは皺《しわ》の寄らないように。
○「お習字、生花《いけばな》、お琴《こと》、おどり――こういうものに却《かえ》ってモダニティを感じ、習い度いと思うことはあるけれど、さて、いざとなって見るとね。」
○「何でも断《ことわ》られて顔が赭《あか》くなるようじゃ駄目《だめ》よ。」
○女に向って機嫌《きげん》を取るような男も嫌いなら、見下げて権柄《けんぺい》づくな男も嫌い。
○自分で慥《こしら》えたものくらい気に入るものはない。洋服でも、お友達でも。
○「お金入れの口を開けてみて、お金が一文《いちもん》も無いときは何だか可笑《おかし》くって可笑くって、あはあは笑うのよ。たとえ困るのは知れ切っていても、若さのせい[#「せい」に傍点]か知らん。」
○「訣《わか》れの挨拶《あいさつ》のお辞儀《じぎ》をしてしまってから、また立話をする。あんなことあたし達にはないわ。」
○「おなかが減《す》いて家へ帰る電車がなかなか来ないときだけ、ちょっとセンチになるわよ。」
○来年あ
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