現代若き女性気質集
岡本かの子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)描写《びょうしゃ》であり

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 これは現代の若き女性気質の描写《びょうしゃ》であり、諷刺《ふうし》であり、概観《がいかん》であり、逆説である。長所もあれば短所もある。読む人その心して取捨《しゅしゃ》よろしきに従い給《たま》え。

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○彼女はじっとして居《い》られなくなった。何か試《こころ》み度《た》がっている。自分を試《ため》して見度《みた》がっている。自分の市場価値を。
○「恋など馬鹿《ばか》らしくて出来《でき》なくなりましたわ」と言う。「けれども愛の気持ちだけは失い度くありません。」
○彼女に取ってスピーディで無いものは魅力《みりょく》が無い。それで退屈な時は、せめて街の自動車を眺《なが》める。
○「結婚? そうね。出来るだけ我儘《わがまま》をさして呉《く》れる男か、それとも絶対的に服従させられる強い男とならばね。」
○チョコレートを食べられる暇《ひま》さえある職業だったら職業というものは何という好もしいものでしょう。
○繕《つくろ》った靴下《くつした》でも穿《は》くときは皺《しわ》の寄らないように。
○「お習字、生花《いけばな》、お琴《こと》、おどり――こういうものに却《かえ》ってモダニティを感じ、習い度いと思うことはあるけれど、さて、いざとなって見るとね。」
○「何でも断《ことわ》られて顔が赭《あか》くなるようじゃ駄目《だめ》よ。」
○女に向って機嫌《きげん》を取るような男も嫌いなら、見下げて権柄《けんぺい》づくな男も嫌い。
○自分で慥《こしら》えたものくらい気に入るものはない。洋服でも、お友達でも。
○「お金入れの口を開けてみて、お金が一文《いちもん》も無いときは何だか可笑《おかし》くって可笑くって、あはあは笑うのよ。たとえ困るのは知れ切っていても、若さのせい[#「せい」に傍点]か知らん。」
○「訣《わか》れの挨拶《あいさつ》のお辞儀《じぎ》をしてしまってから、また立話をする。あんなことあたし達にはないわ。」
○「おなかが減《す》いて家へ帰る電車がなかなか来ないときだけ、ちょっとセンチになるわよ。」
○来年あ
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