たりのことまで見当がつくけれど其《そ》の先は考えても判《わか》らない。考えると頭が痛くなるから止《よ》す。
○ついでに洗う洗濯物が無くて、お湯にどっぷり入るときくらい嬉《うれ》しいことはない。
○「どうしてこう心配事が出来ない性分《しょうぶん》だろう。もっとも心配事があると直《す》ぐレコードをかけて直ぐ紛《はぐ》らかしちまう癖《くせ》があるんだけれど。」
○牡丹《ぼたん》や桜のように直ぐ散ってしまう花には同情が持てない。枯《か》れてもしがみ付いている貝細工草《かいざいくそう》や百日草《ひゃくにちそう》のような花に却《かえ》って涙がこぼれる。
○ラグビーを見ているときだけ男の魅力を感ずる。
○子供は少し不器量なのが好き。
○「自分ながら利口《りこう》過ぎるのが鼻につくから、少し馬鹿になる稽古《けいこ》をしようと思うんだけど。」
○お金があると、ついお友達と円タクに乗ってしまって。
○大概《たいがい》な事は我慢《がまん》が出来るけれど。鈍感《どんかん》なものだけはトテモ堪《たま》らない。
○ジャズの麻痺《まひ》、映画の麻痺、それで大概の興味は平凡なものに思える。始終《しじゅう》習慣的に考えているのは「何か面白《おもしろ》いものは無いか知らん。」
○「一生のうち一度だけ、巴里《パリ》は死ぬほど行って見度《みた》いわ。」
○フレッシュの苺《いちご》クリーム、ブライトな日傘《ひがさ》、初夏は楽しい。
○折角《せっかく》ハイキングに行っても、帰って来て是非《ぜひ》銀座へ寄らねば何となく物足《ものた》り無い。
○偉くなろうなぞとはちっとも思わない。空虚な気がする。それより刹那《せつな》々々の充足感。
○そりゃ時々はくさる[#「くさる」に傍点]こともあるわ。希望の飛行機が経済的事情にぶつかって、うまく飛行が運ばない時の気分のエアポケット。けれども理由を運動の不足になすり[#「なすり」に傍点]付けてしまって、せっせとスポーツすれば癒《なお》る。
○わたくし達は、外でお友達と一緒《いっしょ》の時は「ノシちゃえ」なぞと随分《ずいぶん》、男のような言葉も使ってわあわあ騒ぐ。けれども家へ帰って家庭の人となる時は、まるで別人になっておとなしい良家の娘になる。それでいて、どっちにもちっとも矛盾《むじゅん》を感じないのは、われながら不思議《ふしぎ》だ。
○「一生に一度は真剣《しんけん》な気持ちにさ
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