理想の至魚だ。自分が出来損いとして捨てて顧みなかった金魚のなかのどれとどれとが、いつどう交媒して孵化して出来たか」
 こう復一の意識は繰り返しながら、肉情はいよいよ超大な魅惑に圧倒され、吸い出され、放散され、やがて、ただ、しんと心の底まで浸《し》み徹《とお》った一筋の充実感に身動きも出来なくなった。
「意識して求める方向に求めるものを得ず、思い捨てて放擲した過去や思わぬ岐路《きろ》から、突兀として与えられる人生の不思議さ」が、復一の心の底を閃めいて通った時、一度沈みかけてまた水面に浮き出して来た美魚が、その房々とした尾鰭をまた完全に展《ひら》いて見せると星を宿したようなつぶらな眼も球のような口許も、はっきり復一に真向った。
「ああ、真佐子にも、神魚華鬘之図にも似てない……それよりも……それよりも……もっと美しい金魚だ、金魚だ」
 失望か、否、それ以上の喜びか、感極まった復一の体は池の畔の泥濘《でいねい》のなかにへたへたとへたばった。復一がいつまでもそのまま肩で息を吐き、眼を瞑っている前の水面に、今復一によって見出された新星のような美魚は多くのはした[#「はした」に傍点]金魚を随《したが
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