々知りつつ、どうしても逆なコースへ向ってしまうのだった。誰《だれ》があんな自我の無い手合いと一しょになるものか、自分にはあんな中途《ちゅうと》半端《はんぱ》な交際振りは出来ない。征服《せいふく》か被《ひ》征服かだ。しかし、この頃自分の感じている真佐子の女性美はだんだん超越《ちょうえつ》した盛り上り方をして来て、恋愛《れんあい》とか愛とかいうものの相手としては自分のような何でも対蹠的《たいしょてき》に角突き合わなければ気の済まない性格の青年は、その前へ出ただけで脱力《だつりょく》させられてしまうような女になりかかって来ていると思われた。復一はこの頃から早熟の青年らしく人生問題について、あれやこれや猟奇的《りょうきてき》の思索《しさく》に頭の片端を入れかけた。結局、崖の上へは一歩も登らずに、真佐子がどうなって来るか、自分が最も得意とするところの強情を張って対抗してみようと決心した。到底《とうてい》自分のような光沢《こうたく》も匂《にお》いもない力だけの人間が、崖の上の連中に入ったら不調和な惨敗《ざんぱい》ときまっている。わけて真佐子のような天女型の女性とは等匹《とうひつ》できまい。交際《つ
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