狂童女の戀
岡本かの子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)てれ[#「てれ」に傍点]ては

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ふら/\する手つき
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――きちがひの女の兒に惚れられた話をしませう。
[#ここで字下げ終わり]
 と詩人西原北春氏はこの詩人得意の「水花踊」などまだ始まらぬまだほんのほの/″\と酒の醉ひがまはりかけたばかりのところで――あれが始まるころはまつたく泥醉状態になつた西原氏なので――話し始めた。
 支那の李太白らが醉つて名詩を作つたといふのはどれほどの醉ひに達したときか知りませんが、わが國の大詩人西原北春氏にありては、今北春氏が
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――きちがひに惚れられた話をしませう。
[#ここで字下げ終わり]
 と厚い童男のやうな唇にいくらか微笑をふくんでいひ出した程度の醉ひの状態が一番、この大詩人の詩的面目の躍如たる表現に適してゐることを私に
次へ
全11ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 かの子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング