親はそれを見て
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――ご覽のとほりです。
[#ここで字下げ終わり]
 と遂々聲を立てゝ泣き出して仕舞つた。

 西原氏は、そろ/\襲ひかゝつて來る醉ひのみだれ[#「みだれ」に傍点]を追ひ拂ふやうにしながら、そのはなしの最後をわれ/\にした。
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――その少女はそれから間もなく死にました。
  わたしはその少女を思ひ出す度に、なつかしいやうな、癪にさはるやうな、可哀相なやうな、妙な氣持ちになつちまふのです。が、要するに、まあ、こんな話は酒でも呑んだ時でなければひと[#「ひと」に傍点]にははなし憎い話ですなあ。
[#ここで字下げ終わり]



底本:「岡本かの子全集 第一巻」冬樹社
   1974(昭和49)年9月15日初版第1刷発行
入力:網迫
校正:瀬戸さえ子
1999年2月6日公開
2004年2月11日修正
青空文庫作成ファイル:
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