街頭
(巴里のある夕)
岡本かの子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)出庇《でびさし》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)炭酸|瓦斯《ガス》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+宛」、第3水準1−84−80]《も》ぎ
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 二列に並んで百貨店ギャラレ・ラファイエットのある町の一席を群集は取巻いた。中には雨傘の用意までして来た郊外の人もある。人形が人間らしく動く飾物を見ようとするのだ。
 百貨店の大きな出庇《でびさし》の亀甲形《きっこうがた》の裏から金色の光線が頸の骨を叩き付けるほど浴せかける。右から左から赤や水色の紫外光線が足元を掬《すく》う。ここでは物は曖昧でいる事は許されない。明るみへ出て影を※[#「てへん+宛」、第3水準1−84−80]《も》ぎとられるか闇に骨まで呑み込まれてしまうかだ。
 行列の前の方で鬘で年を隠したマダムが逃げた若い情夫と思わずめぐ[#「めぐ」に傍点]り合った。金棕櫚織《パルミエドル》の襟
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