愛
岡本かの子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)逢《あ》ふ
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)右|膝《ひざ》を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「にじむ」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)さば/\して
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
その人にまた逢《あ》ふまでは、とても重苦しくて気骨《きぼね》の折れる人、もう滅多《めった》には逢ふまいと思ひます。さう思へばさば/\して別の事もなく普通の月日に戻り、毎日三時のお茶うけも待遠しいくらゐ待兼《まちか》ねて頂きます。人間の寿命に相応《ふさ》はしい、嫁入り、子育て、老先《おいさき》の段取りなぞ地道に考へてもそれを別に年寄り染みた老け込みやうとは自分でも覚えません。縫針の針孔《めど》に糸はたやすく通ります。畳ざはりが素足の裏にさら/\と気持よく触れます。黄菊《きぎく》などを買つて来て花器に活《い》けます。
その人にまた逢ふときには、何だか予感といふやうなものがございます。ふと、たゞこれだけの月日、た
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