溜息や、私のたまに気がはずんで得意になってするお喋舌や、それから慰めが欲しくなってするいたずら[#「いたずら」に傍点]なんかを、黙って受けいれて呉れる人が欲しかったのよ。でなけれや、私の生きる根が無くなっちまうのよ。
――ふむ。
――でも欧洲人には誰一人そんなことに堪えて呉れる人は無かったのよ。欧洲人というものは理解無しには何事にも肩を入れて呉れない性質の人種よ。私のこんな妙な性質は説明したところでなかなか理解しては呉れ無いのよ。また説明して理解して貰っちまうと今度は私に対して父親や母親のような気構えになって、あんまり単純に甘やかし初めるのよ。贅沢を云う様だけど私の望んで居る「条件」を男としてかなえて呉れる魅力を無くして仕舞うのよ。私沢山の欧洲人に失望してあなたを見付けたのよ。
――うむ。だんだん君の話が判って来たよ、イベット。
――まあ聞いてて…………今まであなたは私のすることに無関心であるらしい程黙って私に何でも勝手を為《さ》せて呉れたわね。それで居て全然私に興味が無いという素振りでも無かったわね。あなたこそ私の妙な慾望に堪えて呉れるただ一人の男だと、私心の中で感謝して居たの。

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