て何が面白いんだ。君が僕に要求するのは一体何だ。
[#ここで字下げ終わり]
 小田島の言葉には来る早々からあんな女に纏《まつわ》られ通した憤懣《ふんまん》も彼の無意識の中に交って居る。と、イベットの体が少し慄《ふる》えて、その慄えの伝わる手が小田島の肩に掛った。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
――矢張り、あなたも、そう云う事をいう方だったの。
[#ここで字下げ終わり]
 彼女は有《あり》たけの精力を瞳に集め、小田島の顔に見入り言葉を続けた。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
――東洋人も西洋人と同じ様に矢張り謎に堪えられ無いのでしょうか。
[#ここで字下げ終わり]
 近くでつくづく見るイベットの身体は、乗馬服の毛織地を通してもその胸と腰とのふくらみ[#「ふくらみ」に傍点]に何処か「女」になり切れ無い小児性体質が感じられる。それがまた異様な魅力となって小田島の愛感を急き立てる。彼はぐっとイベットの手首と肩を押え、苦しそうな声を出した。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
――云って呉れ給え。もっと、はっきり云って呉れ給え。僕には君の云うことが、まだは
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