寄せて陽射しを自分達の顔から新来の印度女達の面上へ譲る。此の五人の印度女の内で一段|際立《きわだ》って見えるカシミヤ代表の秘書の夫人は細くすんなりとした体に桃色絹のインド服を頭や腕や腰にはめた黄金造りのバンドで締めつけ、同じ色絹のべールを頭から背へかけて居た。足には流石《さすが》に英国風の飾り靴をはいて居たが足頸にも金環をはめて居た。彼女は腰掛けて居ながら亢奮したように絶えず身を動かして体中の金飾りを鳴らした。彼女は身をくねらせて魅惑的なしな[#「しな」に傍点]をしながら大理石の彫刻のような顔の鼻柱に迫る両眼の生々しい輝きに時折り想い詰めた情慾のようなひらめきを見せてべールの間からガルスワーシー夫妻や二人の日本人達を交互に見て癇高《かんだか》い声で言った。
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――私は詩人です。私は三代続いた詩人の家の娘です。私は詩が好きですよ。英国ではイエーツが一番好きで、其の次ぎにはシェリー、キーツが好きです」
[#ここで字下げ終わり]
カシミヤ夫人は景子が期待して居たように同じ東洋人を懐かしいとも言わない。そればかりか其の度合いの取れない飛び上った話の
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