ス》を遠くにかいま見つゝ、
その金剛石《ギヤマン》に輝く空のひかりを、
 (彼處《かしこ》にはよい國あり……)
いま見くらべて悲しみ嘆くああ眼下のわが古巣の土地、
そこには起伏する山河《さんか》幾百里のうねり、
たはむれる獸、遊ぶ鳥の影ひとつ見えぬおびえの國、
ああ蹼《みづかき》の赤い脚さへおろし得ぬ土地に今空より優しい聲をおとし、
御身等《おんみら》のよい心のために祈らう、鵠《くぐひ》の鳥、

ああ祈らしめよ、祈らしめよ、この人生の逆風に吾が弱い心のまた吹きおとされぬやう、
ああ祈らしめよ、祈らしめよ、片羽《かたはね》おとして死身《しにみ》に飛ぶ『生』の險路のまた突きやぶれるやう、
 (わたしは微笑《ほほゑみ》を欲す……)
そして天《あま》がけり、青い空をゆき、御身等《おんみら》のうへに、
この胸にひそむ火の叫びを雪ふらさう、わが希《ねが》ひとして……!

  夜語り

Well my dear, あれはお伽話見たいな話だよ、
おれもお前も知らない世界、
雪降る窓に蝋燭の灯あかあかと、
家内そろつてお年越しの祭り……

(丸太小舍には息吹《いぶ》く年の瀬。)

Well my dea
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