狽 en mon jardin bien peu de fruits vermeils.
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ]Charles Baudelaire.
わが露《あらは》な胸が初めて君の赤い脣をうけ、君の脣を押しあてられた一瞬時、
わが二十幾年の孤獨の境涯底ふかく祕《ひ》められた黒い鐵櫃は、
奇しくも黄金《わうごん》の十字の紋章かゞやきいだし、感激に眩《めくる》めく一使徒がバプテスマの河をよろめき足して岸に這ひあがるごとく、
わが多端にして光あふるゝ未來の陸地《をか》へとわたしはよろめき押しだされた。
敗殘のわが旗を新しく染め、黄金の色燦たる十字の紋章をしるし、
今わたしは君の前へと敬虔にひざまづく裸の騎士、
戀は快樂でない、心の輝きである、おゝわが胸よりこの神を放したまはざれ!
胸に感激のこの火花ひらめき出でしときわが鼓動の鳩尾《みぞおち》に君の脣はこれを感じたまうたか。
今世界は黒い旗をおろし、青空の幕をかゝげ、その中天《ちゆうてん》に仰げとばかり、
破るゝがごとき光こぼつ日を照らし出した、ああこの最初のキス。
鵠
狂はしい位魅力ある海の彼方《かな
前へ
次へ
全39ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
福士 幸次郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング