を感じて、牧場の柵に今いつまでもいつまでも倚つかかる……。
あたたかく春風は吹いた、
雪はとける、
日は赤い。
[#地から1字上げ]3 ※[#ローマ数字10、1−13−30] 10
小さい花
灰色の季節、
鉛色《なまりいろ》の雲、
白い粉《こな》のやうな雪がチラ/\降り、
そしてその雪で包まれた野原に
紅《あか》い小さい花が咲く。
おお紅い小さい花が咲く、
その花に私はものをいふ、
お前は何時生れ、
何時育ち、
何時蕾をもち、
そして何時その眞中《まんなか》に黄色い蕋を持つ小さい花を開いたか。
私は旅人《たびびと》だ、
私はひとりぼつちだ
私は灰色のながい季節を迎へ
鉛色の雲を上にいただき
身にはチラチラと粉雪を受ける。
ああ赤い日が霧のなかにおぼれてゐる。
風は泣くやうにそよそよと吹く。
そのなかにお前は瞳のやうに咲く。
[#地から1字上げ]5 ※[#ローマ数字6、1−13−26] 13
天上の戀
曉の眞蒼《まつさを》な空のうへに、
赤い雲が一と切れ浮んでゐる。
地上には嵐が吹いてるが、
人は未だ覺めない。
私は寢轉んで、
莨をのんでゐる。
布團の上にゴロ寢
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