よ、
このどんどん降る雪のすばらしさよ。
被虐待者
寒む風のなかで私は幾人かの借金取りに逢つた。
どれもこれも業突く張りだ、
無理矢理おれから財布をとり
着物をとり、肌着一枚にした。
やがてその肌着もとつて自分を丸裸にした。
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(おお烈しい吝嗇坊《けちんばう》どもよ
取ることより知らない人鬼達よ
最後の一匹まで逃しまいとする虱取り!)
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さて此處でおれは丸裸にされて鳥渡することに困つた。
何だか平常《ふだん》と勝手が違つて鳥渡の間途方にくれた。
ところで傍に河があつたのでいきなりそれへ飛込んだ。
借金取りはびつくりして暫時あつけにとられた。
その間におれはずんずん泳ぎ出した。
やがて彼れ等はうしろから不意に喝采した。
今おれから取つた肌着股引着物を振つて喝采した。
だがおれはそんなものには目もくれずずんずん泳いだ。
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(そんなにおれのする事が面白く見えるなら、
ちと君達もやつて見ろ!
若くはこの寒ざらしの風のなかで、
せめて眞裸《まつぱだか》にでもなつて見ろ
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