病むだらう、
今迄よりもつと高熱が出るかも知れない。
おれは今迄冷たい空を歩いた、
おれは太陽の光を反射したばかりであつた、
だが自分の光を出さずにゐられなくなつた、
ああおれのまはりは何て寒いのだらう。
泣けよ
自分は君が泣くことを許す、
自分は君が泣くことを許す、
ああ泣けよ泣けよ、
汝の魂はその涙に洗はれん、
汝の心はそのために、
暗底《やみぞこ》の星の如く雨にぬるゝとも、
しめるとも、
更にそれによりて光をまさん。
ああ泣けよ、
泣けよ、
汝の心の底より汲み出して、
涙なきまでなけよ。
汝の涙はかわくことなし、
汝の涙は海より出づ、
汝の涙は雨後のすきとほれる海より出づ。
ああ泣けよ泣けよ、
汝の自然のために泣けよ、
われは泣くべきものに泣かざる人を愛せず、
嵐のあとのきよき野の如き顏せざる人を愛せず、
ああ泣けよ泣けよ。
誰が知つてる
汝《おまへ》は愚鈍な木である。
葉はしげり、
梢はのび、
春が來れば、
花が咲き、
鳥も來て鳴く。
だが汝《おまへ》は愚鈍な木だ。
いくら花が咲いても、
鳥が來て鳴いても、
葉が茂つても、
梢が延びても、
汝《おまへ》
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