にゐる。
聲が聞えるのはまだしもいい、
聲も形もかいくれ解らぬ事がある。
だがこの鳥を一度掴まへたらしめたものだ、
今度は掴まへた彼れがその鳥になる。
いくら何《なん》か出て來て邪魔したつて
もう駄目だ。
芥子粒《けしつぶ》のやうに小さくなつて、
夙《とつく》に向うを飛んでゐる。
嵐の中で
嵐に打たれてゐる人間はいふ、
おれは嵐の中だ、
おれのまはりは眞暗だ、
この風はどうだ、
だがその一陣の疾風の上に、
嵐雲《あらしぐも》の上に、
一羽の金の鳥が流れる樣に平圓を描く。
熱を病んでる星
私は天上で無類の星だ、
綺麗な星だ。
だが自分はいろんな病ひにせめられてゐる、
むしむしした天上の惡熱だ!
ああ毒ガス!
だがこの毒ガスの中に渦卷いてる
この苦しさを見ろ。
毒ガスにたたられてゐるのだ、
この黒赤いまはりの空氣に。
ああおれの赤くいき苦しい光が見えるか、
熱にをかされてる赤い光が見えるか、
それはおれだ。
おれは默つてゐる。
依然として默つてゐる。
しかし之れはいいのだ。
おれは段々高熱に惱むだらう。
しかし之れは今迄病まないでゐた時より、
よくなつてゐるのだ。
おれは
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