た。

その星は悲しまず、
嘆かず、
永遠の闇の中に一段と光をまして、
輝いてゐた、
寒空のなかに。

彼等は暫く默つてゐた、
そして再び彼等も耳こすりした。
接吻しあつた。
風はそよそよと果もなくふいてゆき、
木の葉はまた一としきり身を烈しくふるはせた。

  夜曲

[#天から4字下げ]離れてゐる彼女に贈る

靜かな世界で、
おれは君に語る。
ねがはくは君は永遠にわかくあれ、
ねがはくは君は永遠に微笑してあれ、
ねがはくは君は永遠に心靜かであれ。
よし眠つてゐるとも、
よい夢を見んことを。
よい夢を見てつまらぬものに、
さまされないことを。

ああガラス窓にうなる蠅ひとつ、
赤くとろ/\と沈む西日、
ああ暮るる夜《よる》、
永遠の夜《よる》、
ねがはくはその暗に君にあいそよく、
美しい星あれ、
底びかりする星あれ、
なつかしい星あれ。

ああわれは君のかつて見た海をわすれず、
君の遊んだ濱を忘れず、
その海によな/\うつる星のごとく、
荒いうねりに影うつす星のごとく、
われは君をば思ひだす、
われは君をば思ひだす。

  幸福

幸福といふものは鳥見たいなものだ、
この廣い野原の中
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