た頃から見ると作のない今の自分は一段と悲境にある事は感ぜずに居られないけれども、自分は此處から燃え上る火焔の未來に於て異常である事は信じて疑はない。如何なる劍の穗先きが此處から出るか、如何なる叫びが出るか見ろ。

 自分が此處まで來るに就いては感謝しても感謝しきれない人がどれ位あるか知れない。今その内でも之を出すに就いて非常に骨折つてくれた兄、自分を勵まし自分に力を與へてくれた木村莊太君、木村莊八君に感謝してこの自序を終る。吾が愛は今に解る。吾が愛は今に解る。見よ、吾が狂烈なこの愛を。
 二月二十八日
[#地から1字上げ]福士幸次郎
[#改ページ]

 錘

[#ここから4字下げ、19字詰め]
これは全世界を失つて彼自身の靈魂を獲た人の問題である
[#ここで字下げ終わり]
[#地から4字上げ]アアサア・シモンズ
[#地から2字上げ]「文藝上に於ける象徴派の運動」

[#地から2字上げ]明治四十二年作

  白の微動 ――十一月

中空《ちゆうくう》の輝《かがや》き
並木《なみき》の梢は尖《とが》り
目覺《めざ》めた光は建物の角《かど》かどに
鮮《あざや》かな煌《きらめ》きの夢を抱く


前へ 次へ
全59ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
福士 幸次郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング