つて稀有な吾が心の發火であつたけれども、これが吾が心の全面に動いたものでない事は、その時それとはまるで違つた『冬の日暮』や『遠い故郷』などといふ作が吾れ知らず混じて出たのでも解る。その『發生』の迸發的な歡びは『すべての友達に送る手紙』を最初のものとして一切の因襲關係、一切の古い自己を燒亡ぼす情熱となつて、今迄の自分や今迄の周圍關係を攻撃、破壞、顛覆する役目に當つた。
斯して鬪ひの上に更に鬪ひ、鬪ひの上に更に鬪ひをして、吾が心は倦《あぐ》ね果てるまで健鬪した。『太陽崇拜[#「太陽崇拜」は太字]』の諸篇『自分のものとする女に送る歌』『あらし』『日本の文學者に與ふる歌』『男性の歌』『航海の歌』等はその中から出た自分の愛生の叫びである。特に自分は『航海の歌』の或る部分を最も好く。そして自分は幾度か自分で叫んだ聲で自分を勵まされてその新生《ニウ・バアアス》の年(大正二年)を送つた。自分は太陽の子である。如何なる奈落の底へ落ちてもあの燃え上る空中の偉大崇嚴な火の圓球を憧れてやまない。自分は彼れから遠ざかれば遠ざかる程其愛着の深さを感ずる。此詩集の最後の篇『太陽崇拜[#「太陽崇拜」は太字]』を書い
前へ
次へ
全59ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
福士 幸次郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング