てゐる
どしりどしりと歩いてゐる
そして腹の底からわなないて來る歌を感ずるのだ
勢ひのよい眞に微妙な歌を感ずるのだ
ああ平原のかなたに ――九月一日
ああ平原のかなたに
夜はまだ明けない
星は霧の中にさざめき
水蒸氣は冷く叢《くさむら》をうるほしてゐる
わが命は濡れて渇《かわ》くことなく
わが戰ひの旗は肩越しにしをれてゐる
ラツパは夜なかの夢をつづけ
兵隊は闇間《やみま》に起き伏す草のやうに眠つてゐる
かかる中にわが魂は目醒《めざ》めて
一線になつてゐる敵を見る
遠い睡つてゐる地平線のさきを見る
葉摺れの中にただひとりめざめて
永遠に醒めてゐる目が一つある
それが敵を見る
睡れる味方と敵の中に
唯ひとりめざめてそれを見る
白い蛆蟲の歌 ――十月二日
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[#ここから横組み]“Je suis le fils de cette race
Dont les cerveaux plus que les dents
Sont solides et sont ardents
Et sont voraces.
Je suis le fils de c
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