とのびて行くのだ
根強く人間の魂を感じながら
男の仕事をやつて行くのだ

  ああ LOVE よ ――八月九日

ああ Love《ラブ》 よ
君よ
君は僕をひきしめる
かなり苦しい箍《たが》だ
苦しいたがだ
君は今人の所にゐる
みもちにまでなつてゐる
それでも自分は
君を思ふことはやまない

君は僕が戀してる事は知つてるだらう
けれどもこれ位苦しんでゐることは知るまい
この心持は解るまい
月日もたつから消えてることと思つてるだらうが
自分の Love はちつとも消えない
そして何もない空中をひた走りに走るのだ
意志はそれだけ苦しいのだ
そして手をさしのべてゐるのだ
さしのべて日中の星を掴まうとしてゐるのだ
ああその星はどこに輝いてゐる
見えるは一面に白い空ばかりだ
まつぴるまの空だ
君の影はどこにもない

このぼんやりしたものの中に
身體《からだ》を投げ出しながら
自分はどんどん産むだけのものを産んで行く
産んで産んで産み飛ばすのだ
君よ
君は一時人のものになつて居れ
自分は一時その運命を悲しむが
すこしもまゐらない
自分は出すだけのものを出して行く内に
いつか君をつかまへてやる
自分
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