家《すみか》を見出《みいだ》す
おお河尻《かはじり》よ
限りもなくつづいてゐる砂原であれ
おおそこから見える海よ
限りもなく廣いをやみない動搖《どうえう》であれ
自分はそのまだ見ない處に
小踊りしながら進む
嵐のあとの何人《なんぴと》も踏まない土堤《どて》の上を
はにかむやうなあたりの景色に溺れながら
だぶりだぶりと鳴る響きのよい
水音を聽きながら
あらし ――七月十九日
何人《なんぴと》も感じない
このボヘミアンの心
すぐれた饑《う》ゑを感じながら
歩くのである
ふきつのる夜明け方の嵐に
自分は涙を感じる
ぐるりの林は狂亂してるからだ
頭《あたま》ごなしにざわだつて
西と東に吹き廻されるからだ
自分はこの涙ある力を
いつぱいに感じながら
歩いて行くのである
すぐれた饑《う》ゑを感じながら
あるいて行くのである
自分のものにする女に送る歌 ――七月廿一日
私は君を戀してゐる
何故《なぜ》とも知らないけれど
自分は君に牽引《けんいん》を感ずる
君は馬鹿だ
盲目である
けれども君には純《じゆん》な魂がある
君は自分でそれを知らない
君は斯くして亡びてしまふのである
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