光がふえてゆく、力が増してゆく
ふらふら昇つて
落ちさうで落ちない
日は空中を昇つてゆく
だんだん呼吸《いき》をはずまして
勢ひ込んで昇つてゆく

    ※[#ローマ数字4、1−13−24]

ああこの中に吾が愛子よ
ああこの中に吾が愛子よ
お前はまじまじ何を見てゐる
お前はおどおど何を怖がつてゐる
自然はいつでもいちやついてゐる
自然はいつでもとりとめなく生きてゆく
けれども其處にまことの彼があるのだ
それに逆つて泣いててはいけない
泣顏《なきがほ》あらはに進んでゆけ
泣きの涙でもよい進んでゆけ
恐怖を歡喜にかへて胸ををどらせろ
深く深く自然を愛しながら進め
ますます勇氣を振ひ起して進め
お前は日の子だ
冬が來ても決していぢけない
科學もいいもので文明もいいものだ
自然はいつでも宏量で
いつでも機嫌《きげん》よくわけてくれる
自然は人間を可愛がつてゐる
わけ隔てなく誰へも彼れへもわけてくれる
決して自然を僕等が征服するの何のと大きな口をきくな
そんなことをいふから人間は墮落する
自分で自分の舌を噛んでゐる
永い事、永いこと怖い夢を見て暮らしてゐる

悲しくつらい所をたどつてゐる

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